風景に書き込まれた歴史を読み解く

The Story Behind the Scenery

御代田に展開する平原火砕流台地

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小諸市街地は平原火砕流台地の上につくられている。

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平原火砕流の堆積物は火山灰からなる。垂直な崖をつくるのが特徴である。この地形を田切と呼ぶ。

冬の浅間山

草津温泉に用事がありました。途中で、冬の浅間山の景色をひさしぶりに堪能しました。冬は地形がよく見える。北麓地質図をつくったのは、5年前のいまごろでした。冬で木々から葉っぱが落ちて地形が丸見えなことに驚きながらつくりました。日本でも、季節と場所を選べば能率的な地質調査ができることを知りました。



西窪の吾妻川右岸に露出する平原火砕流の高い崖。中央の明るいところが、数年前に崩落した箇所。1万5800年前、吾妻川はこの地点でこの高さまで埋められて上流部分がせき止められた。天然ダムが生じて、やがて決壊したのだろうが、その堆積物は下流の前橋市付近にみつからない。

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笹見平から遠望した浅間山。冬だから地形がよくわかる。近景は、草津白根山の太子火砕流がつくる波打った地形。30万年の時間がこのような大きな波状地形をつくった。なかでも凍結融解作用、すなわち霜柱の作用が無視できない。

熊川の崖を調査しました

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2万4300年前から現在に至る浅間山の噴火の歴史を記録する崖の全景。ひとが見なかった過去は地層にのみ記録される。

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平安時代1108年に噴火したBスコリアの最上部がたいへんよく残っている(左)。貴重な崖だ。8月29日に噴出したBスコリア下部の上に追分火砕流から舞い上がったピンク火山灰が重なっている(右)。その上の黄土色火山灰の上部が浸食されている。ここに4週間の時間間隙がある。

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嬬恋軽石(YPk)と板鼻黄色軽石(YP)の間にはカラフル火山灰が挟まれている。噴火がなかったときを示すロームは挟まれていない。したがってYPとYPkは同じ噴火で噴出した。ただしカラフル火山灰の分布が丸いから、時間差は数年から数十年あったと思われる。東西南北の風が吹いた。

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嬬恋軽石(左)と板鼻黄色軽石(右)の接写。板鼻黄色軽石の下には、むらさき粘土を挟んで白糸軽石がある。しかし再堆積が著しくて、噴火情報のあらかたを失っている。時代が氷期だったことも関係するだろう。白糸軽石は結晶をほとんど含まず細かく発泡しているので、他の軽石から容易に区別することができる。

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塚原土石なだれの上に、ロームを挟まずに、板鼻褐色BP2軽石が直接重なる。黒斑山が崩壊したあとすぐ、プリニー式噴煙柱が立ち上がって噴火が始まった。セントへレンズ火山の1980年5月18日と同じことが、もっと大規模に浅間山で2万4300年前に起きた。

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熊川に大きな崖

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浅間牧場の東を流れる熊川に、自然にできた大きな崖があります。草軽電鉄路線跡沿いです。一番下に2万4300年前の塚原土石なだれがあります。中位に露出する厚い軽石は小浅間山から飛来した白糸軽石でしょう。1980年代に白糸の滝北に台風後に生じた大きな崖と同じくらい貴重な露頭だろうとみられます。

土曜日(5月15日)に調査します。同行希望者はメールまたはツイッターください。しっかりとした足回りと、ねじり鎌が必要です。

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平原火砕流がつくった水域の底に堆積した粘土層

高崎から二度上峠を越えると、いままでの山道とは打って変わった平坦地になって快適なドライブが楽しめる。ここは浅間牧場の北部だ。北軽井沢に到着する直前、浅間大滝の手前で、道路の左に熊川の清流が現れる。

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その水辺によく成層した粘土層が露出している。これは、1万5800年前に平原火砕流の堆積物がこの地域を埋め尽くしたあと生じた水域の下に堆積した地層だ。浅間大滝駐車場にも同様の地層がかつて露出し、その中に嬬恋軽石が挟まれていた。したがって、平原火砕流の噴火のあとすぐに、おそらく数十年程度でできた地層だと解釈される。

岩村田を越えた平原火砕流



南に進んだ平原火砕流は、佐久市瀬戸まで達した。山頂火口から17キロ離れたこの火砕流台地の末端崖は採土対象になっている。軽石礫はほとんど含まれず砂サイズ以下の粒子ばかりからなる。

懐古園の平原火砕流

小諸の懐古園は、1万5800年前に平原火砕流がつくった台地の上にある。



深い谷が園内の火砕流堆積物に刻まれている。谷壁には、桃色がかった火山灰の中に角がとれて丸くなった軽石や岩片が乱雑に混じった地層が露出している。谷壁はほぼ垂直に切り立ち、谷底は広い。このような浸食地形を地形学では箱型峡谷とよぶが、、この地方には田切(たぎり)という言葉がある。佐久平に展開した平原火砕流の堆積物には田切が至るところでみられる。田切の谷底は水田として利用されている。

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千曲川に下ると、火砕流堆積物に掘り込まれた深さ4メートルの穴の断面を観察することができる。穴は土石流によって運ばれた砂礫で埋められている。穴の上に6メートルの砂礫層が重なり、その上を別の火砕流堆積物が覆う。合計10メートルの砂礫の堆積にかかった時間は数週間程度だとみられる。

二枚の平原火砕流 南城公園

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小諸市南城公園の平原火砕流。上下二枚あるように見える。間には厚さ20センチほどの砂層が挟まっている。最上部1センチが黒い。

下の堆積物の上半部はサーモンピンクに色づいている。高温状態で堆積したためだ。たくさんのパイプ構造が認められる。そこから立ち昇った高温ガスが厚さ20センチの砂層を貫いて上の堆積物を赤褐色に着色している。したがって、上の堆積物がここに重なったのは、下の堆積物が完全に冷え切る前だったことがわかる。時間差は数年程度か。

上の堆積物は白く、とくに下半部に、軽石濃集部が多い。軽石は表面がこすれて丸くなっている。これは火砕流の堆積物ではなく火砕流堆積物から二次的に発生したラハールの堆積物だと思われる。平原の国道18号沿いで、上の堆積物が下の堆積物の表面に溝を削り込んでいる様子を観察したことがある。それは、水流によってつくられたもののように見えた。

平原火砕流は姥が原も覆った

姥が原は、嬬恋軽石とその上に重なるロームとクロボクからできていると思っていましたが、その東半分(およそ小武沢より東側)は平原火砕流に覆われていることがわかりました。



標高1370メートル地点の露頭です。次の層序が確認できます。

 250cm 嬬恋軽石
 110cm カラフル火山灰
      平原火砕流

平原火砕流は南麓のチェリーパークラインに露出するのだから、北麓でも姥が原まで届いていて自然です。

シラハゲは嬬恋軽石



黒斑山の中腹に麓からよく見える崩壊地シラハゲは、1万5900年前の嬬恋軽石が露出しているから白く見えます。白いから目立ちます。

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接写です。給源近くのプリニー式軽石として典型的です。こういう崖をみて、「指が入る」と言ったのは久野久です。細かい粒子がないので、隙間に指が入ります。大きな軽石の芯はハム色をしています。高温酸化したせいです。

プリニー式噴火というのは、2004年噴火より1000倍くらい難儀な噴火です。浅間山麓だけでなく、風下100キロくらいまで深刻な影響が出ます。浅間山の場合、風下のその距離にたくさんの都市があります。

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北軽井沢のカラフル火山灰(3:日なた)

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日が当たった場合。木の根の影が出てしまう。

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北軽井沢のカラフル火山灰(2:日かげ)



北軽井沢のカラフル火山灰をきれいにして撮影しました。ガリー(雨裂)が、いつも同じ位置にできています。スペーシングもおもしろい。

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南麓のカラフル火山灰と淡黒レス



軽井沢天文台@油井に露出する平原火砕流の上のカラフル火山灰です。北麓と同じように、ピンクの上に青緑がのっています。ピンクと青緑の境界が一直線で鮮明ですから、ピンクの火山灰と青緑の火山灰が降ったのであって、降ったあとに着色されたのではないことがわかります。このセットは、嬬恋軽石の上にあります。

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その上にのる厚さ10センチの淡い黒のレスと軽石質堆積物です。軽石堆積物は、ここでも炭を含みます。この軽石堆積物は、地形をつくっていません。平原火砕流がつくった台地の上にみつかります。YP軽石→平原火砕流→嬬恋軽石と続いた1万5900年前の噴火のあと、およそ500年くらいたってから浅間山で何かが起きたと思われます。堆積物断面の特徴からは高温ラハールのようにみえます。

二枚の平原火砕流

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御代田町馬瀬口の平原火砕流は、上下二枚あります。上は白~灰色で炭化木を含みます。その頂部はピンク味を帯びています。下は黄色です。最上部を褐色の砂丘堆積物が覆っています。二枚の間に、40センチほどのシルトが挟まっていて、その最上部2センチが黒い。

同様の観察を平原の国道沿いや小諸市の南城公園でしたことがあります。最近では、北麓の濁沢で色も岩相もそっくりで炭化木まで含む露頭をみました。

現時点で私は、上は、火口から噴出した火砕流ではなく、火砕流堆積物から発生したラハールだと考えています。

平原のガスパイプ

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