風景に書き込まれた歴史を読み解く

The Story Behind the Scenery

前橋高崎地域の自然史地図

maebashi0820b.png

関東平野の北西端に位置する前橋市と高崎市は、利根川がつくった扇状地の上に形成された都市である。東は赤城山、西は榛名山に囲まれたこの地域は、両火山の噴火と山体崩壊の影響を受けて土地の姿を大きく変容させてきた。2万4300年前からは吾妻川を介して、西に50 km離れた浅間山からの影響も受けるようになった。火山とともに歩んだこの地域の自然史を一枚の地図で表現した。

2016年9月26日発売、1部500円(税別)、ネット販売だと送料込みで600円。420 mm x 690 mm
▼ネット販売
・キプカスピリット(ヤフオクメルカリ
きつねの雑貨屋さん
▼店頭販売
・群馬大学生協荒牧店
・紀伊國屋書店前橋店
▼電子ファイル
高解像度と低解像度

大量部数の割引販売に応じます。コメント欄に書き込んでください。あるいは直接私に電子メールください。

鬼神岩にかかる月

IMGP3741.jpg
烏川を遡って高崎市倉渕町を二度上峠に向かって進むと、途中左手に鬼神岩が現れます。下仁田の荒船山と似たような地形です。どちらも第三紀の火山岩からなりますが、ほぼ水平で傾斜していません。第三紀以降、この地域の土地は隆起したがほとんど傾いていないことがわかります。

群馬の稲麦二毛作


群馬では、いま麦を刈り取って稲作の準備に取り掛かっています。田植えまでにはもうしばらくかかって、6月下旬になります。近隣の新潟や長野と比べると、1ヵ月以上遅くなります。刈り取った麦に火を入れてあったので、農夫にその理由を尋ねました。理由を二つ教えてくれました。ひとつは雑草を殺す効果。もうひとつは「浮いちゃうんだよね」とのこと。そのまま水田にすると、麦が水面に浮いてしまうのだそうです。高崎市大類。

沼田市発知のサクラ

沼田インターチェンジから玉原スキーパークに向かう途中、発知(ほっち)という集落を通過します。なめこセンターがあるあたりです。武尊山からの雪解け水が豊富な田舎集落です。きのうの日曜日、村じゅう春の花でいっぱいでした。

 IMGP3107.jpg
(左)発知のヒガンザクラ、(右)上発知のシダレザクラ。背後の雪山は武尊山。

群馬の地層観察ポイント


大きな地図で見る
マークをクリックすると、地層観察ポイントの写真と説明をご覧になれます。

敷島公園の桜満開

 IMG_3345.jpg 
前橋市には敷島公園という大きな公園があります。利根川の旧河道を利用した公園です。私の自宅から群馬大学までの通勤ルートのちょうど中間にあるので、きょうは自転車に乗って満開のソメイヨシノを楽しみました。

滝の慈眼寺のシダレザクラ(2)

 IMG_3290.jpg
冷たい北風が止んで暖かくなったので、滝の慈眼寺のシダレザクラ(エドヒガン)をまた見に行ってきました。ちょうど見頃です。天気に誘われて大勢のひとたちが来ていました。場所は、高崎ジャンクションのすぐ西側です。駐車場があります。

利根川サイクリングマップ

滝の慈眼寺のシダレザクラ

日本に戻りました。とてもよい季節に戻ってきました。きのうの風が止んだので、近くの滝の慈眼寺(高崎市下滝町)まで自転車に乗ってシダレザクラを見に行ってきました。咲き初めです。満開は来週末でしょうか。

 IMG_3257.jpg IMG_3251.jpg

草津白根山の湯釜

 IMGP2635s.jpg

草津白根山の標高2100メートルにある湯釜は強酸性のお湯をたたえる火口湖である。水深は30メートル余と浅い。湖底には溶融硫黄が存在し、中空の小硫黄球がそこから湧き上がって水面を漂う。

湯釜は、1882年から1983年までの102年間に、水蒸気爆発を何度も繰り返した。今後も繰り返すと思われる。湯釜の水蒸気爆発は、岩石を四方に放出するとともに灰色の粘土を風下に降らせる。火口縁にはそうして噴出した粘土と岩石が厚く堆積している。左の写真の最上部に写っている白色粘土は1939年4月24日12時20分の爆発で降り積もった。

この2枚に写っている白色粘土は降り積もったのではなく、御嶽山2014年9月27日と同じような火砕流の堆積物だと考えられる。右の写真の白色粘土の中に火山れきがいくつも含まれていることに注意。大きな火山岩塊はその後の爆発で地表に載ったものであろう。(2015年4月3日加筆)

爆発によって火口から飛び出した岩石は放物線を描いて、1983年11月の爆発でも、0.7キロ遠まで達した。20世紀前半の爆発では、多数の岩石が2.5キロ遠まで達したとみられる。万座温泉にあるいくつかのホテルはその射程距離内に立地している。

前橋市内を流れる利根川の崖観察

前橋市内を流れる利根川の西岸に地層を露出する崖がいくつかあります。きょうは、中央大橋から上毛大橋までの区間のサイクリングロード沿いを観察しました。まだ新緑が始まったばかりですから、観察可能です。来月になると葉に覆われてみにくくなるでしょう。



板鼻黄色軽石(YP)の上にカラフル火山灰がのっています。その上に平原火砕流堆積物から発生したラハールの堆積物がのっているようです。利根川でこの時期のラハール堆積物をみたのは初めてです。

IMG_2333s.jpg

大渡自動車教習所脇の川原に赤岩がまだありました。この赤岩は1996年に群馬大学生が発見して記録しました。赤岩は、塚原土石なだれの中にみられる特徴的な岩石です。黒斑山(古い浅間山)の心棒をつくっていた岩石です。

IMG_2336s.jpg

クロボクの上にのる白い地層は、牛池川ラハールと呼ばれます。9660年前に榛名東麓に発生しました。YPの下に塚原土石なだれの堆積物が見えています。

IMG_2344s.jpg

これは5世紀末に伊香保で起こった渋川噴火の堆積物だと思われます。いわゆるFA噴火です。基底に小豆色火山灰があり、その上にピンク~青色の火山灰が層をなして積もっています。その中には葉の化石が含まれます。オレンジ色の火山灰の上にはデイサイトの砂礫が重なります。これはラハールによる堆積物でしょう。この地点まで熱雲が達したかどうか、精査する必要があります。

IMG_2368s.jpg

上毛大橋は東に大きく傾いて利根川の上に架かっています。西側が東側より30メートルも高い。10メートル分は2万4300年前の塚原土石なだれ堆積物が東側では浸食されて失われたのに、西側では堆積当時のまま存在するからですが、残り20メートル分は2万0000年前に陣場土石なだれ堆積物がその上にのったからです。他の橋と上毛大橋東詰は利根川に架かっているが、上毛大橋西詰は榛名山に架かっていると言ってもよいでしょう。

軍艦のような荒船山 火山ではない



下仁田から佐久に抜ける内山峠に軍艦のようなかたちをした荒船山がある。第三紀の厚い溶岩流でできていて、広くて平坦な山頂部にはクロボクが厚く堆積している。海中に噴出したマグマがつくったパラゴナイト凝灰岩がこの厚い溶岩流の下にある。荒船山は溶岩流でできているが、火山ではない。海水準近くで形成された一枚の溶岩流が、普通の山と同じように長い時間をかけて隆起して1356メートルの山になった。

磯部温泉を流れる碓氷川で地層観察

磯部温泉のそばを流れる碓氷川の河原は、地層を観察するのに最適な場所です。磯部駅から歩いてすぐです。車で行くなら北岸を西側からアプローチするとよいでしょう。



地層の観察

碓氷川の水面近くには、第三紀の泥岩が露出しています。川の水で浸食されて地層面が広く露出しています。注意深く観察すると、植物片などの化石をみつけることができます。地層面はわずかに北側に傾いています。

北側の崖に目を移すと、この泥岩が25メートルほど積み重なっています。地層が層になっていることがよくわかります。一枚一枚の地層は過去の地表面です。それはいま地中に広がっています。

碓氷川が泥岩の表面を削り取ったあと、礫を積み重ねて平坦にしました。礫層の厚さは場所によって異なりますが、だいたい5メートルほどあります。このような泥岩と礫層の境界を不整合といいます。礫は右側につんのめるようにして並んでいます。これをインブリケーションといいます。昔も碓氷川が左から右へ流れていたことがわかります。

礫層の上には、赤い土が4メートルほど積もっています。その上に黒い土が1メートルあって現在の地表をつくっています。双眼鏡を使って観察すると、赤土の中に厚さ50センチの黄色い軽石が挟まっているのが見えます。浅間山で1万5800年前に起こった噴火で降り積もった板鼻黄色軽石(YP)です。その下にも、軽石が何枚か挟まれているようです。

崖の上に行ってみると、地表のすぐ下にも白い軽石が20センチくらい積もっていることがわかります。これは1783年(天明三年)噴火の軽石です。

自然史の考察

泥岩と礫層は、水流が運んでつくった地層です。赤い土と黒い土は風が運んでつくった地層です。それぞれロームとクロボクといいます。これらは風塵の堆積物であり、毎年0.1ミリずつ積もります。1000年で10センチです。浅間山の軽石を除くと、ここには3メートル積もっていますから、3万年かかったことがわかります。崖の上が碓氷川の水をかぶらなくなってから3万年たったということです。

3万年前の碓氷川は30メートルも高いところを流れていたのでしょうか。いいえ、そうではありません。土地が3万年かけて30メートル隆起したのです。土地が隆起するから、碓氷川は河床をせっせと削ります。こうしてここに高い崖ができたのです。これを河岸段丘といいます。河岸段丘は、隆起地帯にみられる特徴的な地形です。

3万年で30メートルですから、隆起速度は毎年1ミリです。東日本の川には河岸段丘がたいていみられます。風が運んだ地層と水流が運んだ地層の境界(土と礫層の境界)は、崖の上からだいたい1割のところにいつもあります。それは、東日本における土の堆積速度と土地の隆起速度がだいたい10倍違うことによります。

碓氷峠のめがね橋と浅間天明軽石



中山道坂本宿から、アプト式線路跡を碓氷峠をめざして登ります。傾斜が一定で路面が平坦だからとても歩きやすい。トンネルを5つくぐると、めがね橋が現れます。

IMG_2427s.jpg

線路跡からほんの少し外れただけで、浅間山の天明三年(1783年)噴火で降り注いだ軽石が地表にみられます。3センチほどの大きさで、浅間山にずいぶん近いことが実感されます。

IMG_2435s.jpg

沢筋には、第三紀の安山岩溶岩の破片が転がっています。斑晶が石基の中に浮かんだ斑状組織がよくわかります。ここは、マグマから溶岩または軽石ができる話を子どもたちにするのに格好の場所です。

IMGP2040s.jpg

帰り道、トンネル入口の上で気持ちよさそうにひなたぼっこしているサルをみつけました。年末年始の寒さとは打って変わって、桜が咲く頃の陽気に恵まれた一日でした。

武尊山から湧き出す水を利用した川場村の稲作



武尊山は、第四紀前半、いまから100万年ほど前に噴火した火山です。関東平野からは、赤城山の後ろに隠れてしまって目立ちませんが、冬から春にかけては赤城山の左側に雪をかぶって白くなった武尊山が顔をのぞかせます。火山体の大きさは、赤城山や榛名山にひけをとりません。大きくて立派な火山です。山腹には、スキー場がたくさん建設されています。

武尊山の南斜面にある川場村は水に恵まれて日当たりがよいので、おいしいお米がとれます。黄金の稲穂がいま盛りです。刈り取りが始まりました。

FC2Ad