風景に書き込まれた歴史を読み解く

The Story Behind the Scenery

雹のように落下した火山豆石


ハワイ・キラウエア火山の1790年火山灰の中にみられる火山豆石。たくさんの火山灰が寄せ集まって直径1-2ミリメートルの球を構成している。この火山豆石はふつうよりやや小さい。大気中を雹のように落下した。

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粒のそろった火山豆石が、入戸火砕流堆積物の中に生じた吹き抜けパイプの中を充填している。この火山豆石は、火砕流から空高く上昇した噴煙の中で形成され、大気中を雹のように落下して再び火砕流の中に戻った。火砕流中では岩片と同じようにふるまった。

氷河に閉じ込められた火山灰



アイスランドでは、何千年も前の噴火による黒い火山灰が氷河の中に閉じ込められている。

枕状溶岩は垂れ下がる



水底に噴出した溶岩は、しばしば枕状溶岩になる。枕状溶岩はガラス質の殻をもっている.また、プリズム型の節理が中心に向かって成長する.上の枕は下の枕を覆って成長するので、この枕状溶岩がもし傾いて産出しても、その上下は容易に判定できる.アイスランド。

柱状節理は内に向かって成長する



厚い溶岩がゆっくり冷却すると、体積減少に伴って割れ目が入り、空間の再配分が行われる.こうしてできる割れ目を節理という.節理は等冷却面に垂直に低温側から高温側へ、すなわち外から内へ、伸びる.こうして柱状節理が生じる.柱状節理の断面は六角形を基本とする.

鬼押出し溶岩の流出を書いた史料

鬼押出し溶岩は8月5日の鎌原土石なだれのあと、天明噴火の最後の出来事として山頂火口から流出したと長い間考えられてきたが、そうではなく、8月2日から始まったプリニー式噴火と同時に山頂火口の北縁からあふれ出して北山腹を流れ下ったのだと思われる。そう考える状況根拠は次である。

・ 8月4日午後に発生した吾妻火砕流の流下方向に影響を与えている。
・ 表面にスコリアラフトをのせている。
・ 8月5日10時に発生した鎌原土石なだれの中に、鬼押出し溶岩から生じたと思われる黒岩が多数含まれている。
・ 前進する安山岩溶岩流の先端で爆発が起こった事例が他の火山で知られている。
・ 8月5日昼以後に書かれた史料に鬼押出し溶岩流出の目撃証言がない。

2006年10月、浅間山北麓の標高1730メートル付近にある鬼押出し溶岩の一角で、その表面をおおう吾妻火砕流の堆積物を発見した。そこには、吾妻火砕流だけでなくプリニー式軽石もみられる。この発見によって、8月4日午後には鬼押出し溶岩が北山腹に存在したことが、状況証拠によって推論されるに留まらず、事実として確認された。

豊富に残されている天明三年噴火史料の中に、鬼押出し溶岩の流出は本当にひとつも書かれていないのだろうか。8月5日以後の縛りを解いて、史料の中に鬼押出し溶岩と解釈できる記述がないか探してみよう。

8月5日(七月八日)未明、鎌原土石なだれ発生の数時間前、鎌原用水の源泉に泥が山のように湧き出していた、あるいは4メートルほども泥が湧き上がっているのを見たという報告がある。これこそが鬼押出し溶岩流出の目撃証言でなかろうか。江戸時代のひとに溶岩という概念はなかっただろうから、湯気を上げながらゆっくり前進する鬼押出し溶岩の先端を泥の山だと認識したとしてもおかしくない。

「神(鎌)原の用水ハ浅間の腰より来ル.七日晩流一円来す.村の長たる者不思議成事かな源を見んと八日の未明見に趣しに泥湧出つる事山の如し.見と斉しく飛鳥の如く立帰り村へ来ルと大音に、大変有家財も捨て逃よ逃よ(と)呼りて我家へ帰、取者もとりあへずあたり(近)辺を引連て高き山へ遁れて命恙なし。呼ばれたる家にて、何気違の有様逃てよくバ朝飯給て退くべしと油断する中、大浪天にみなぎり其はやき事一時に家も人も皆泥中のみくずニ成。」蓉藤庵『浅間山大変実記』萩原史料2.201


「七月初瀧原ノ者草刈ニ出テ谷地ヲ見候へハ谷地之泥二間斗涌あかり候。是ヲ見テ畏レ早速家財ヲ被仕廻立退候。」毛呂義郷『砂降候以後之記録』萩原史料3.141-142


その恐怖は、村人たちがただちに家財をまとめて立ち退くに十分だった。朝食をすませてから立ち退こうとした家族は泥に飲まれてしまったという。この逃げ遅れによる明暗は、大笹村名主黒岩長左衛門(大栄)が蜀山人に依頼して書かせた文章に盛り込まれた教訓を想起させる。

蜀山人記念碑(5.162-163)
信濃なるあさまかたけにたつ烟ハふるき歌にも見えてをちこちの人のしる所なり。いにし天明三のとし夏のはしめよりことになりはためきてほのほもえ上り、烟ハ東のそらになひきて灰砂をふらし、泥水をふき出し、同七月五日より八日にいたるまで夜昼のわかちもなく、ふもとの林ことごとくやけ、泥水ハ三里はかり隔りたる吾妻川にあふれゆきて凡二十里あまりの人家林田圃ハいふに及ばず、人馬の流死せしもの数をしらす。しかるに有かたきおほんめくみによりてやうやうもとの如くにたちかへるといえへとも、たつ烟ハさらにやます。いにし年この災をおそれて速にたちさりしものハからき命をたすかり、おそれすして止れるものはことごとく死亡せり。これより後にいたりて又も大きにやけ出んもはかりかたけれは、里人この碑をたてて後のいましめとなすことしかり。

富士のねの烟ハたたすなりぬれとあさまの山そとことハにみゆ

文化十三年丙子秋九月 蜀山人書
黒岩大栄建

へこんでいても火山



オレゴン州のクレーターレイクは、7700年前にできたまだ新しいカルデラである。地下にあった大量のマグマを火砕流として地表に噴き出した結果、天井が陥没してできた。噴火がすっかり終わったあと、雨が降って水がたまり、美しい湖になった。

火山の根っこ


シップロックは,浸食から取り残された中新世の火山の火道である.シップロックの高さである500mより厚い地層が,中新世と現在の間にこの地域から削り取られた.

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シップロックから南に弧を描いて伸びるダイクの側面には,急冷によって生じた亀甲割れ目がみられる.(四州接合点の南東40km。ニューメキシコ州内)

熱雲におそわれた小学校



雲仙岳の麓にあるこの小学校校舎は1991年9月15日の熱雲で焼かれた.校庭には10cm足らずの堆積物がそのまま残っていた.背後は熱雲の発生源である溶岩ドーム.長崎県深江町大野木場小学校、1994年10月24日撮影

いま氷河におおわれた火山


雲海の上に突き出したレーニア(ワシントン州)。

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レーニアはいま氷河に覆われている。氷河におおわれた火山が噴火すると、麓に泥流災害が発生する危険がある。

氷河の下でできた火山



アイスランドのヘルズブレイズ。氷期に、氷河の下で噴火してできた。卓上火山という。テーブルの高さが当時の氷の表面にあたる。いま氷はすっかり融けてしまった。テーブルの下はおもに枕状溶岩でできているが、テーブルの上には空気底で噴火してできたスコリア丘がある。

スコリア丘はストロンボリ式噴火でできる


米塚は、いまから1700年前に阿蘇カルデラ内で起こったストロンボリ式噴火でつくられたスコリア丘である.数週間~数ヶ月かけてゆっくり成長したと思われる.火口から噴出したスコリアは斜面をころがって火口縁の内と外の両斜面に崖錐をつくる.崖錐斜面は平滑で直線的であることが特徴である.その斜面は基底面と不連続に接する.地表を平行に覆って連続的なスカイラインをつくる降下テフラとはつくる地形が異なる.写真では、スコリア丘の右端に溶岩流の出口が認められる.ここから流出した溶岩はパホイホイだったから米塚スコリア丘はそれによってほとんど壊れなかった.溶岩流の出口は、米塚に隠れた向こう側にもう一ヶ所ある.

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アイスランドのヘイマエイ島にあるこのスコリア丘(エルドフェル)と溶岩流は、1973年の噴火で生じた。白壁の家々は、2メートルも降り積もったスコリアの下から掘り出されて、再び使われている。

断層運動によってずれた道路



1891年10月28日の濃尾地震のとき、地表に断層が現れて道路が7メートル食い違った。断層を挟んで向こう側が左にずれた左ずれ断層である。(岐阜県本巣町金原)

台湾の1999年9月21日地震で生じた断層


豊原市の中正公園西にある商店街の中に生じた4メートルの段差.人口密集地に、これほどの上下変位を持つ断層が現れたのはこの921地震が初めてだ.

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霧峰の光復中学校の運動場を横切った地震断層.トラック舗装面が重なってしまっていることから、東西から押しつけられた逆断層であることがわかる.

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地震の揺れで崩壊した光復中学校の校舎.この中学校では800人余の生徒が学んでいる.もし授業中に地震が起こったらと思うと、ぞっとする.道路を挟んで隣にある小学校の校舎にはほとんど被害がなかった.

グランドキャニオン


グランドキャニオンの最上部は二畳紀末のKaibab石灰岩でつくられている.三畳紀以降の地層もこの地域にいったんは堆積したのだが、その後ほとんど浸食されてしまった.公園の東端のCedar Mountainにかろうじて三畳紀の地層が残っている.斜交層理が顕著なCoconino砂岩は、二畳紀中頃に大陸の上に広がった砂漠の堆積物である.キャニオンの中段にある赤色の一枚岩は、石炭紀のRedwall石灰岩がつくる垂直な崖である.

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ほぼ水平に重なった地層の最下部は、カンブリア紀のTapeats砂岩でつくられている.その下には、傾斜した地層や著しく褶曲した地層が不整合に重なる.もっとも古い地層は20億年前のVishnu片麻岩である.グランドキャニオンが高さ1500mもの深い峡谷なすのは、中新世に始まったコロラド高原の隆起に抗して、先行谷であるコロラド川が鋸の歯のように切り込んだからである.

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ミュールに乗った観光客が峡谷を下る。

ビーバーダム



人間を除けば、自然環境をもっとも著しく改変する動物はビーバーである.水際に生えている木は彼らにとって必要不可欠な存在である.木の近くまで安全に水中をもぐっていけるように、ビーバーはダム湖をつくるのだという.Beaver lodgeとよばれる家までつくる.

チョウノスケソウ



前回の氷期が終わりに近づいて地球全体が温暖化しているとき、ヨーロッパアルプスにふたたび寒い時代が訪れた.その地層中にはDryas Octopetala(和名はチョウノスケソウ)の花粉が多量に含まれるので、この時代をYounger Dryasという.Younger Dryasは紀元前9690年ころに終了して、そのあとは現在の暖かい時代である完新世となった.Denali国立公園では、この Dryas Octopetalaを多数見ることができる.

永久凍土



Fairbanksの湿地の地下には永久凍土がある.アスファルト舗装された道路が数年で波打ってしまい、保守がたいへんだという.永久凍土の上には、トウヒの一種であるblack spruce が生えている.black spruce は樹高が10 mくらいまでしかならない小さな針葉樹である.だから、永久凍土の上の浅い土壌の中でも根を張ることができる.しかし、しばしば根が樹幹を支えきれなくなって傾いてしまう.Black spruceより大きいwhite spruceは、樹高20 mまで達する.河川や湖の縁で永久凍土のないところに生える.

ワンダーレイク・キャンプ場から見たデナリ



AnchorageとFairbanksの間に北米大陸でもっとも高いMt. Denali(あるいはMt. McKinley;6194m)がある.この山の北側を東西に走るDenali断層は、北米プレート内の第一級逆断層である.この断層は、南から沈み込む太平洋プレートによって生じた付加体と本来の大陸地殻との境界である.Denali国立公園内のWonder Lake (標高600 m)からみる Mt. Denali は、目の前のMcKinley川からいきなり高さ5000メートルもの巨大な壁としてそびえ立っている.

マッターホルンと槍ヶ岳

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スイス・ツェルマットのシンボル、マッターホルン。このような尖った地形をホルンと呼ぶ。四方を氷河で削られてできた。


飛騨山脈から抜き出て天を突く槍ヶ岳もホルンである。いまから2万年前の氷期には、槍沢や飛騨沢を氷河が埋めて流れ下っていた。

シャモニーのメールドグラス氷河



メールドグラス氷河の表面に年縞がみえる.縞の間隔は30-50m.前年の冬に積もった雪がすっかり融けた晩夏だから氷河の表面がよくみえる.ここは雪線の下にある.氷河の縁にある高さ100mのモレーンは、19世紀に終わった小氷期の時代の氷河前進でつくられた.

片品川の河岸段丘



利根川に合流する直前の片品川には、典型的な河岸段丘がみられる。左は沼田市街地。右は赤城山。これらの段丘は、上流部の山地から森林が失われた氷期におもに形成された。古い時代に形成された段丘が、その後の隆起によって押し上げられて階段状の地形が生じた。沼田市街地がのる最上段の段丘は30万年前に形成された。

地球最大の火山 マウナロア



ハワイ島のマウナロアは地球最大の火山である。海面からの高さは4200メートルだが、太平洋の海底から測ると8000メートルに達する。山頂部分は丸いから、麓から真の山頂を見ることがかなわない。西洋の盾を伏せたようなかたちをしているので、盾状火山とよぶ。浅間山や富士山のような円錐形の火山とは、サイズもかたちもまったく異なる。手前の窪地はキラウエア・カルデラ。

アアとパホイホイ



玄武岩の溶岩には、とげのある破片粒子で表面をおおわれたアア溶岩と、なめらかな表面をもつパホイホイ溶岩の二種類がある。両者は化学組成の違いによるのではなく、噴火のダイナミクスの違いを反映している。多量の溶岩を一気に噴き出す激しい噴火では、揮発性物質が分離するときに大量の気化熱を奪ってマグマの温度が急速に下がる。そうすると、斜面を下っている最中に固化が始まるからアア溶岩ができる。一方、温度低下が少ない穏やかな噴火ではパホイホイ溶岩ができる。揮発性成分をあらかた失ったマグマは穏やかな噴火しか起こさない。

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