風景に書き込まれた歴史を読み解く

The Story Behind the Scenery

浅間山1783年噴火の最近研究レビュー

安井・小屋口(1998、日大紀要)は、吾妻火砕流の主要部分が8月4日夕刻から始まったクライマックスのあとに流出したと考えた。前掛山の山腹に露出する軽石の最上部に複数の火砕流堆積物が挟まれていることを根拠にした。安井真也さんはいまもこう考えているのだろうか。その場合、8月4日午後に六里ヶ原へぬっと押し広がって樹木を焼いたと書く古記録をどう扱うのか。

古記録では、吾妻火砕流が8月4日午後で、軽石噴出のクライマックスがその夕刻から翌日未明までだったと読める。これは荒牧さんの時代から知られていた。それなのに、軽石→火砕流の順番が頑なに信じられてきた。その理由は何か。古記録より野外での層序を優先した結果だろうか。

峰の茶屋の東大火山観測所構内に露出する軽石の中央部とそのすぐ下にオレンジ色の火山灰が3、4枚挟まれている。それらが吾妻火砕流から噴き上がった灰かぐらが風下のここに降り積もったものだと初めて解釈したのは、たぶん私だ。軽石の上半分が8月4日夕刻から始まったクライマックスの堆積物だから、この解釈は古記録の記述とよく合致する。

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福岡市博物館の金印

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福岡市西新(にしじん)は、玄界灘を埋め立ててつくったおしゃれな街。金印を展示する福岡市博物館はそこにある。たいへん立派な建物だ。

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金印。1784年に福岡・志賀島で百姓甚兵衛が発見。亀井南冥(なんめい)がその価値を認めた。「後漢書」にある西暦57年記述を裏付ける物証だとされるが、ニセモノ説が昔からある。2007年3月3日、朝日新聞が三浦佑之・千葉大教授の著書『金印偽造事件』を紹介した

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西新は、長谷川町子がサザエさんを発案した街だという。福岡の居酒屋に座ると、突き出しがこんなにたくさん出る。これは韓半島の文化だと思った。

イノシシ穴と衝突クレーター

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これは衝突クレーターではなく、イノシシが掘った穴だ。イノシシは、ミミズが欲しくて鼻で穴を掘る。2004年9月1日の爆発の後、小浅間山の上に火山弾がつくったクレーターがあると報告された。山頂火口から3キロを優に超える地点だからいぶかしく思って調査に行った。このようなイノシシ穴がいくつもあった。素人判断はまず疑え。2004年9月の火山弾の最大到達距離は2.35キロである。

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これらが本物のパン皮火山弾。衝突した地面にスープ皿のような浅いクレーターをつくる。

鬼押出し溶岩の上を覆う砂礫は古い

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鬼押出し溶岩の上を覆う砂礫は、1783年噴火のあとに山頂火口で活発に繰り返されたブルカノ式爆発で放出された砂礫が、斜面を転がり落ちたり、大雨のときに水流で運ばれれたものだと30年間信じていた。大量だと漠然と感じていたが、それ以上疑問には思っていなかった。

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きのう現地に踏み込んで、初めて理解した。これらの砂礫のほとんどは1783年以前から存在していた前掛山の表層物質なのだ。なにも、1783年以後のブルカノ式爆発による放出物である必要はまったくない。前掛山上部にかぶさる鬼押出し溶岩の厚さはとても薄い。溶岩は下にすべて流れ切ってしまったと言ってよいくらいだ。そこには、西斜面と同じように、過去数千年間に渡って山頂火口から繰り返したブルカノ式爆発によって放出された大量の砂礫が斜面に露出している。それがいま大雨や雪解けのたびに崩れている。

野外観察には決まった順番がない

野外観察には順番がない。基礎→応用、数学→力学→電磁気学→量子力学のような学習の順番がない。野外に行くと、複雑な自然が丸ごと襲ってくる。観察者は、そのなかから解釈できるものを探す。

初心者は、先生が順番に教えてくれないからと不平を言うが、自然観察は順番で教えられるものではない。教えようとすると次から次へとさまざまなことが湧き出してくる。枝葉に飛んで、また幹に戻ってくる。戻ってくればまだよいほうで、行ったきりになったりする。

そういう事情があるから、案内者の説明はいきおい早口になりがちだ。そこを、セーブしてゆっくり話すのはなかなかむずかしい。

参加者の側、聞く側には、この事情をわかってもらいたい。案内者が順番立てて説明してくれないからわかりにくいなどと不平を言わないでほしい。生の自然の理解は、要素分解型の物理学による理解とはまったく異質のものなのだ。こういう自然理解の方法もあることも知ってほしい。

そして、この方法よって初めて、移ろいやすい複雑な自然をほんとうに理解することができることを知ってほしい。あなたにまだ理解されていない自然が、あなたのすぐそばにある。

自然の理解の仕方はひと通りで答えが決まっているわけではない。観察者の数だけ理解の仕方がある。自分の個性を自然にぶつけて、自分の理解の仕方を私に見せてほしい。

野外観察会、案内者の小道具

野外観察会で案内者をすることになったとき、用意するとよい結果が得られるだろう小道具を紹介します。


・地図パネル。裏は白。
・ホワイトボードマーカー。地図パネルの裏に書く。書いたらすぐティシュペーパーで消す。
・差し棒。忘れたら枯れ枝で代用する。レーザーポインタが有効なときもある。
・マイクつき拡声器。マイクが頬を伝わって伸びていて両手が自由になるのが必須。これは、スピーカーをおでこにとりつけるタイプ(ミドリ安全のファレボホーン。ただし生産終了)。腰にベルトでスピーカーを取り付けるタイプもある。後ろに声を届けたいときに便利。

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