風景に書き込まれた歴史を読み解く

The Story Behind the Scenery

漫画『セクターコラプス 富士山崩壊』

sc[1]
SECTOR COLLAPSE―富士山崩壊
漫画:光原 伸
原作:石黒 耀
監修:小山真人
2008年11月

259ページの漫画なのだが、読み終えるまでの時間が想像していたよりずいぶんかかった。セリフの文字数が通常の漫画より多いからなのではなかろうか。このことが、この本を手に取る読者の意欲をそいでしまわないか心配だ。しかし文字数が多い分だけ、ストーリーはよくできている。原作『昼は雲の柱』は神話部分が長くて少々たいくつだったが、漫画はこれをほとんどカットして軽快に進む。

火山の噴火あるいは災害危機管理に少しでも関心のあるひとには、大満足な漫画に仕上がっている。火山危機にさらされた社会には、さまざまな利害対立が存在することをよく描写している。ときには行政の情報よりも民間の情報が信頼できる場合があることを示したのは新しい。迫り来る火砕流からいかにして逃げるか。主人公たちは、地下シェルターに逃げ込むよく知られた手段をあっさりと見限って、思いもよらない行動に出る。

デビュー作『死都日本』で宮崎市と鹿児島市をすでに全滅させた石黒にとって、御殿場市を全滅させるのはわけのないことだったろう。しかし、宮崎市や鹿児島市をカルデラ破局噴火が襲う確率は10万年に1回だが、富士山が崩壊する確率は1万年に1回だ。今回の石黒フィクションが提示した課題をわたしたちは前回の10倍の重さで引き受けなければならない。

実名の小山教授だけでなく、登場人物の顔かたちがどれも火山業界の具体的誰かを彷彿させるので読んでいて妙な気分がした。ポニーテールの山野教授は、もちろん原作者の石黒さんがモデルだ。


以下、細部の指摘。

19ページ 欄外にスコリアの説明として「多孔質の噴石」とあるが、これは適当ではない。黒い軽石と書いてほしかった。
95ページ 雲仙岳の1991年火砕流による犠牲者は44名ではなく43名だった。1993年の火砕流でさらに1名の犠牲者があって合計44名になった。
159ページ ストロンボリ式噴火でペレの毛ができないことはないが、ペレの毛はむしろハワイ式噴火の特徴的噴出物である。このことが、読者にうまく伝わっていない。
176ページ 「現在のマグマ噴出量が変わらないと仮定して」は小山教授の言であるから、ここは噴出量ではなく、正しく噴出率と書くべきだ。 単位時間あたりの噴出量を噴出率という。

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