風景に書き込まれた歴史を読み解く

The Story Behind the Scenery

槍ヶ岳の氷河地形

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槍ヶ岳(3180メートル)は、槍沢・飛騨沢・千丈沢・天上沢の四方から氷河が削ってつくった尖塔である。このような地形をホルンという。スイスのマッターホルンが有名だ。絶壁から崩れ落ちた岩石が尖塔の基部に崖錐(がいすい)斜面を形成している。傾斜35-40度の直線的な縦断面をなす。この角度を安息角という。

氷河がつくった谷の横断面はU字になる(写真右)。その谷頭部にはカールと呼ばれる半円形の窪地ができる。緩傾斜の谷底には氷河が運んだ土砂が土手がみられる。これをモレーンという。赤い屋根の山小屋は槍沢カールの中につくられたモレーンをうまく利用している。

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U字谷の中に入り込むと、2万年前にここをすっかり埋めてゆっくりと流れ下った氷河を立体的に体感することができる。この谷の中をジグザグを切って登る登山者は、広い空による開放感のため疲れることを知らない。

飛騨沢の右岸、標高2550メートル地点に、植生が失われてモレーンが露出した場所がある(写真右)。灰色をした細粒子の中に大きな角張った岩がたくさんみえる。大小さまざまの粒を含むことがモレーンの特徴である。氷河の下では、粒子のふるい分け作用が水流のようには働かない。

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地衣類と風化皮膜でびっしりと覆われた多数の岩塊がU字谷の中で斜面をつくっている。風化皮膜の厚さは地表露出時間を知る尺度になる。上部に植生が侵入していることからも、この斜面が現在は成長していないことがわかる。かなり古い時代からこの地表は更新されていないようだ。このような斜面を岩塊流あるいは岩塊斜面というが、その成因と意味はよくわかっていない。


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ダケカンバの森は標高2500メートル付近で終わって、その上にハイマツがあらわれる。ハイマツの樹高は1メートル程度までだから、視野を遮ることはない。高山の景観を楽しむことができる。さらに200-300メートル上昇するとハイマツもなくなり、草本のみの世界になる。7月になって雪渓が消えるとすぐ、高山植物が咲き競う。

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槍ヶ岳頂上から60メートル下のクサリ場でみつかる溶結凝灰岩。37万年前に、わずか2キロ西の水鉛谷火道から噴出した火砕流が残した堆積物の破片だと思われる。

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笠ヶ岳の東斜面には水平の縞模様がみえる。原山智さんの研究によると、これはカルデラの中を埋め立てた堆積物がつくる縞模様なのだという。カルデラ噴火は白亜紀末の6500万年前に起こった。

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